真宗興正派 本山 興正寺

 本年の夏は、かつて経験したことのない暑さと豪雨が日本列島を覆い尽くしました。被害に遭われた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
 思えば、この異常気象は私たち人間が、科学技術の進歩と経済的繁栄を追い求めてきた、 いわば人間中心の思想によって引き起こされたものとも言えましょう。かつて「山川草木みな仏である」と言った日本人は、今や自然を自らの膝下に組み敷いたのであります。帰依処という生きるよりどころを見失った現代は、まさしく末法五濁の様相をあらわし、人類存亡の危機とさえ叫ばれている現状に置かれています。たった今、ここに生きていることの意味を問わずにはおられません。
 この根源的な危機意識をもとに、興正派では教団挙げての信仰運動である「興隆正法運動」を展開しております。興隆正法の願い、それは「仏法ひろまれ」との願いです。親鸞聖人は混迷を極めた鎌倉の世において、苦悩する人々とともに生き、苦悩の衆生を救う正法、浄土の真宗を開かれました。その九十年のご生涯は興隆正法の願いに貫かれ、その志をもって興正寺を建立されたのであります。 親鸞聖人のご苦労を偲び、報恩の誠を捧げ、興隆正法の願いに生かされて生きるよろこびを確認するとともに、その意味をよく尋ねていただき、阿弥陀如来のご本願を聞信し、苦悩多き人生に確かな安らぎを見出していただきたいと願っております。興隆正法運動が全国各地にお念仏の華を咲かせ、みのりの輪がひろまりますことを念じております。
時あたかも、霊山興正寺別院も本山興正寺の本廟になることと相成りました。親鸞聖人の御許において、歴代ご門主のみ教えとともに、倶会一処という私たちにかけられた阿弥陀如来の深い願いに気づかせていただきたいことであります。
 この上は聞法生活に勤しまれるとともに、どうぞ本山興正寺ともども霊山本廟へもお参りいただき、阿弥陀如来のご本願に出遇うご縁を結ばれ、つながったいのちによって生かされ、生きているよろこびを確かめあわれることを願ってやみません。                                 


平成 二十五年 八月            

真宗興正派宗務総長 龍村豐雄