戦後80年を迎えて
2025.08.02
本年は、第二次世界大戦の終戦から80年という節目の年を迎えます。
この80年の間、私たち人類は過去の過ちを反省し、争いのない平和な世界を求め、人類の幸福を願い歩んでまいりました。
しかしながら、私たちの住む世界は、いまなお憎しみの戦火が絶えず、恐怖、不安、悲しみや苦しみの声に世界が覆われています。
2022年2月に始まったロシア連邦によるウクライナ侵攻は、「正当な理由」という正義のもと、いまだに出口の見えない争いが続けられています。またイスラエル・中東情勢は、「報復」という大義のもと、混迷を極め、多くの犠牲者を出す状況を生み出してしまいました。
幸せを求めて幸せを壊し、平和を築くために平和を壊す、私たち人間の愚かさがそこにはあります。
さるべき業縁(ごうえん)のもよほさば、いかなるふるまひもすべし (『歎異抄』第十三条)
阿弥陀仏のご本願に照らし出され見えてくる私たちの姿は、状況次第によってどのような行為をもしてしまうような危ういものです。だからこそ、いついかなる時も、真実であるみ教えを問い尋ね、照らし出される私自身を省みることが必要になるのです。
すべての者は暴力におびえる。すべての生きものにとって生命は愛しい。 己が身にひきくらべて、殺してはならぬ。殺さしめてはならぬ。 (『法句経』第130条)
私たちを取り巻く今日の世界情勢のなかにおいて、私たちは「己が身にひきくらべて、殺してはならぬ、殺さしめてはならぬ」と語られたお釈迦さまのみ教えに耳を傾け続けねばなりません。
親鸞聖人は、お手紙のなかで、
わが身の往生一定(おうじょういちじょう)とおぼしめさんひとは、仏(ぶつ)の御恩(ごおん)をおぼしめさんに、御報恩(ごほうおん)のために、御念仏(おんねんぶつ)こころにいれて申(もう)して、「世のなか安穏(あんのん)なれ、仏法(ぶっぽう)ひろまれ」とおぼしめすべしとぞ、おぼえ候ふ。
とお示しくださいました。
阿弥陀仏のご本願を聞くということは、私たち人間の愚かさを見つめ、仏の正しき智慧をたよりに、「世の中安穏なれ、仏法ひろまれ」と歩みを進めていくことにほかなりません。
戦後80年という節目を迎え、一人ひとりが非戦を願い、平和に心を寄せる機会となることを心から願っております。
真宗興正派 宗務総長
秦 直樹
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